京都地方裁判所 昭和53年(行ウ)7号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【説明】
旧国有財産法二四条による社寺等に無償で貸付けられたものとみなされた国有境内地を有するX神社は国Yに対し「社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律」一条による無償譲与及び同二条による半額売払の各申請をなしたところ、そのうち本件土地についてはYはいずれも申請の要件が具備していないとして、右申請を国有財産法二〇条一項による一般的売払の申請とみなしたうえ、Xに売払わない旨の通知書とともに申請書を返戻した。XはYには本件土地をXに時価売払をする義務があり、右通知は原告の申請に対する却下処分にあたるとしてその取消及び本件土地のXへの移転登記を求めて本訴に及んだ。
【判旨】
二ところで、日本国憲法施行前に旧国有財産法二四条により社寺等に無償で貸付けられたものとされていた国有財産の処分については、従前右財産が社寺等の所有であつたものを無償で国有地に編入していた経緯及び日本国憲法による政教分離の趣旨から、特に社寺処分法が制定されて、同法において無償譲与及び半額売払の申請手続が規定されている(同法一条、二条一項参照)が、右法律は社寺等に対する処分事由を右の二つの場合に限定しているところであるから、それ以外の国有財産の社寺等に対する処分に関しては国有財産法二〇条一項によるものと解される。
右の国有財産法二〇条一項所定の各処分は、行政主体である国が私人と対等の関係において私的な経済活動と同一性質の行政作用としてなすものであり、行政庁がその優越的な地位に基づき権力的な意思活動としてなす公権力の行使とは認められないから、これをもつて行政事件訴訟法三条にいう抗告訴訟の対象となるべき処分と解することは相当でない。本訴のうち原告が取消しを求める部分は、右の公権力の行使とは認められない国有財産法二〇条一項による売払申込に対する被告の拒絶の意思表示を取消の対象としているものであるから、不適法といわざるをえない。
三次に、原告は、社寺処分法所定の要件を欠く場合であつても社寺等に無償貸付のなされていた国有財産については、従前社寺等の所有であつたものを国有財産に編入した経緯に照らし、国有財産法二〇条一項による一般的売払の場合にも国に応諾義務がある旨主張するが、社寺処分法は、旧国有財産法二四条一項により社寺等に無償貸付されていた国有財産について、これが従前社寺等の所有であつたのに国有財産とされた経緯に鑑み、「その社寺等の宗教活動を行うのに必要なもの」に限り、かつ法定期限内に申請のあつた場合に限り、特に無償譲与ないし時価の半額による売払によりその返還を求めたものにすぎず、右の要件を欠く場合にまで国に売払義務があると定めたものと解するのは相当ではない。他に原告主張のような国の売払応諾義務を認めるべき法令上の根拠は無く(原告主張の各通達の存在について被告もこれを争わないが、右通達自体が売払応諾義務の根拠となりうるものでなく、通達の内容も時価売払を要請するにとどまり積極的に売払義務まで認めたものでないことは明らかである。)、原告の右主張はそれ自体失当といわざるをえない。なお、右の結果は、日本国憲法制定時に本件土地が国有財産であつたことが明らかであるから、憲法二九条の財産権保障の規定に反するものでないことはいうまでもない。
(石井玄 野崎薫子 岡原剛)